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JSS飼育・繁殖に向けていろいろある機材や用品をちょっと深く考えるための参考になると幸いです。
今回は飼育用品でよく話題にあがるポイントを中心に少し違った角度から話をすすめてまいります。

<写真は”さと美えび”さま より拝借しております>

飼育・繁殖成功への考察
・飼育、繁殖にポイントとなるもの
シュリンプを飼育する上で必要となるものは、基本的に熱帯魚飼育に必要なものと大きく差はない。ただし他のアクアリウムジャンルに比べて、「ワンランク上の装置」のアドバンテージはあまり必要としない、もしくは直接的に効果がないとされるのがシュリンプ飼育の不思議なところであり、かつトータルバランスの重要性を物語っている。
つまり、日々の管理を含めてじっくりと水槽環境を作り上げて安定させることが成功のポイントとなるのだ。
今回はシュリンプ飼育の経験がないことを躊躇せず、どうせならブリーダーを目指すくらいの気持ちで一歩を踏み出していただくために、長期的なビジョンで参考にしていただけるようなポイントをお伝えしてみたい。




(1)水槽目線からのシュリンプ飼育
シュリンプ自体は非常に小型のため、飼育することだけを考えれば水槽サイズも15cm角の水槽からボトルアクアリウムまで対応させることが可能である。ただし水槽が小型になるほど、日々あたえる餌の量や水質のコントロールがシビアとなり、こまめな手入れを要求されることになるだろう。例えば蒸発ひとつとっても超小型水槽ではかなりのスピードで蒸発による水位の低下、水量の低下に繋がる。
その時、蒸発によって水量が単に減少することだけを考える方がほとんどかなと思うが、重要な問題は蒸発により水槽内の濃度が上昇することを理解していただきたい。
つまり同じ汚れであっても水量が減ることにより、汚れの濃度が増加することが注意点となる。水替えによる水質の安定も含め、やはり超小型水槽での管理は特有のテクニックが必要となるだろう。
ここでオススメしたいのが30cmキューブ水槽(水量約25ℓ)、と60cmレギュラー水槽(水量約50リットル)である。
30cmキューブ水槽は特に飼育する匹数が10匹以下から始める場合にオススメしたい。



理由の一つに、シュリンプ飼育・繁殖のポイントとして、水量あたりの収容匹数がある。
熱帯魚の飼育経験者からすると水量は多くあったに越したことはないと考えるのが常であるが、シュリンプ飼育では、たとえば餌を食べている時間以外にも底床をかき混ぜ、残餌や藻類、付着生物などの間接的な捕食を絶えず行っている。さらに、餌は食べつくされて無くなっているように見えても養分は残留している場合がほとんどであり、固形フードが形をなくした後でもエビたちの間接的な摂取は随時行われているのがポイントだ。
それら一連の動作の中でバクテリアや微生物、藻類を含めた食物連鎖が成り立ち、エビを頂点とする環境の連鎖が噛み合うと、いわゆる爆殖モードにまでなるケースもある。
複数を同じにセッティングした水槽であっても、見事に結果が違うのは上記のことが大きく関連しているからといえよう。
つまり床面積に対してのシュリンプの数が妥当であるほうが、エビに適した水質環境が構築されるいという特有の考え方になる。
また、60cm水槽では比較的複数、10匹以上の数から収容することが多いレッドビーシュリンプの飼育ケースにオススメである。
レッドビーシュリンプ飼育では豊かな光量を基盤にした水草育成スタイルで飼育・繁殖を狙う場合が多く、たくさんの水草飼育関連機材がリリースされる60cm水槽は周辺機材の面でもアドバンテージがあるといえるのだ。






(2)フィルター目線からのシュリンプ飼育



水槽サイズや飼育スタイルによってもフィルターの選択は変わってくるが、現在シュリンプ飼育・繁殖でオススメできるのがメインフィルターとサブフィルターを併用したシステムだ。互いのメリットとデメリットを補うことが最大の利点かつ、作用すべきポイントが分かれているからだ。
まずメインフィルターとして選考されるのが外部式フィルターおよび底面式フィルターの2種類である。
外部式フィルターはろ過材と呼ばれるフィルター内に投入するバクテリアの住処を使って効率よく汚れを分解する効果が期待できる。
また、底面式フィルターはシュリンプの場合、各種ソイル製品を敷いて使用されるケースがほとんどで、ソイルが持つイオンの吸着効果を利用して汚れの吸収や水質の安定に結び付ける考え方のフィルターである。
このことからまず、水質コントロールの上で影響力の高い外部式フィルターか底面式フィルターかのどちらをメインとするかがポイントとなる。
(外部式フィルターと底面式フィルターのコンビ使用が不可能という意味ではない)

そしてサブフィルター的な存在としてよく取り入れられるのがスポンジフィルターと投げ込み式フィルターであるが、底床で利用されるソイルの特徴や使用するソイルの分厚さでスポンジフィルターか投げ込み式フィルターかを選択する場合が多い。
底床としてソイルを比較的厚く敷き飼育する場合は吸盤タイプのスポンジフィルターを選択、ソイルを少量しか使用せずに薄く敷いて飼育する場合は投げ込み式フィルターを使用するケースが多くなってきていると考える。もちろん各種フィルターを1つだけ使用して飼育することも十分可能であり、多数のろ過器を導入することによるアドバンテージよりも、1種類のフィルターだけのほうが意外と繁殖に成功するケースもある。

代表的なフィルターとその特徴



:外部式フィルター:
水槽内の空間面積を広く残しながら、容量の多いフィルター部によって水質浄化のアドバンテージは髄一。フィルター内に投入するろ過材の特性で水質バランスをコントロールしたり、ろ過材の形状を変化させることによってバクテリアの付着面積とメンテナンス性を考慮することが可能。水草を飼育する場合にも光合成に必要とされるCO2の放出を最小限にすることができるため水草と一緒にシュリンプを飼育する場合には特に重宝される。
フィルター能力が高いとはいえ、フィルターのサポート力を過信すると一気にバランスを崩すこともあるため油断は禁物。定期的なメンテナンスを心掛けたい。
また、給水口はストレーナーになっているため、数社から発売されている吸い込み口に取り付けるタイプの目の細かいスポンジを併用して稚エビやパウダーフードなどのフィルター内混入を避けるようにする。

:底面式フィルター:
スノコ状になった基部の上に底砂を敷いて、エアーリフトによる揚水力を利用し、流動循環で起こる物理ろ過を行うのが底面式フィルター。それをシュリンプ飼育の場合には砂利ではなくソイルを使用し、ソイルの吸着能力や栄養素を効率的に効能させるスタイルでシュリンプを飼育・繁殖させる。ソイルにはろ過の意味として不純物の吸着効果があるのと、水草の育成や微生物の繁殖を助長する栄養素の供給という2つの相違する目的があり、底面式フィルターでそれらの効果を発揮させる場合、製品によるそれぞれの効果が顕著にあらわれるかわりに、増減するソイルバランスをイメージしたい。
素早くソイルがもつ効果が発揮できるため、ビギナーにもベテランにも手早く環境を組み上げることができ、現在最も出番の多いフィルターといえるだろう。
水槽が複数に上るブリーダーの場合にもコンセントの数やコスト面で有利となるからだろう。
ただし底面式フィルターはどうしてもその構造上、長期間使用している場合にソイルの粒子崩れや水草の根張りの影響でリセットを余儀なくされる場合が多い。調子が良い水槽ほど泥化してリセットを迫られるケースがあるのでシュリンプの調子や経過時間を対比してリセット期間を判断したい。


:スポンジフィルター:
小型水槽でのメインフィルターとして、また中型水槽から大型水槽までのサブフィルターとして活躍することが多いスポンジフィルター。基本的にメンテナンスが楽で、直接的な影響がないフィルターであるため、日々変化する環境の中でゆっくりろ過能力を固めるフィルターと考えてよいだろう。構造のシンプルさと素材の質素感から効果を疑いたくなるが、きっちりとバクテリアが付着したスポンジフィルターは即席の外部フィルターや底面フィルターよりもベテランブリーダーに重宝されている。
ろ過材やソイルの直接的影響を受けずにあくまでも飼育水をもとに組み立てられるサスペンダー的フィルターである。メンテナンス時はスポンジを飼育水でもみ洗いするのだが、想像以上の汚れと同時に微生物の付着を実感することになろうだろう。
簡単にエアーリフトで使用できるので後付けでも気軽にアップデート可能である。



:壁掛け式フィルター:
今回のブリーダー訪問で使用されているケースもあったのが壁掛け式フィルターを幹としたシステムである。小型水槽で手軽に使用できるために開発された、ほかのフィルターの歴史に比べれば比較的新しい部類に入るフィルターである。30cmまでの水槽では小型の外部式フィルターを使用した場合、配線の取り回しや水の引き込みに苦労するケースも少なくないため、小型水槽で外部式フィルターを使用されるケースを見ないでいる。
しかし壁掛け式フィルターは外部式フィルターと上部式フィルターをドッキングさせて小型化したようなスタイルであるため、シュリンプ飼育においてもうまく使えば能力を発揮することができる。メンテナンス性に優れるため、付属のカートリッジに工夫を凝らしたり、オリジナルでろ過材を変更すればまさにお手軽外部式フィルターになれるといえるだろう。落下口からの戻り水が多少ソイルを散らしてしまう場合もあるが、流量調整機能の付いたモデルであればソイルを舞わせない、シュリンプに適した水流で使用することができるだろう。循環ポンプでくみ上げる仕組みとなっており、こちらもやはり吸い込み口には別途、目の細かいスポンジでシュリンプ用に変更することが望ましい。活性炭を使用した純正フィルターは立ち上げ初期にスムーズなろ過に結び付けてくれるため、栄養系のソイルとのコンビやアクアリウム経験のない方が初めてシュリンプを飼育される場合にも簡単に立ち上げることができるため、チェリーシュリンプ飼育にも気軽に使用していただきたい。逆に大型水槽に対応するモデルが皆無に等しいため、割り切って使用するのがよい。

:投げ込み式フィルター:
最近脚光を浴びるようになったのがこの投げ込み式フィルターである。
理由はソイルの使用方法の変化により必要性が上がったことが挙げられる。現在のブリーディングスタイルは大きく2つに分かれていて、一つが水草を繁茂させ、ソイルと水草のバランスを組み立てて水質の安定を図る飼育方法。当然水草が茂るためのソイル量が必要で、活着水草のみで飼育する場合以外には底砂を分厚く敷く必要がある。この際は外部式フィルターか底面式フィルターが取り入れられている場合が多く、フィルター能力と水替えのサポートで水質をクリーンに保つことがポイントとなっている。
もう一つがソイルの量を極力抑えて、いい意味でソイルの効果を最小限に抑えて環境を整えて飼育・繁殖させる方法。この場合、極少量のソイルが舞い上がらないために水流の強いポンプ式のフィルターは使用することが難しくなる。底面フィルターも使用できないため、おのずとそれ以外の方法が必要となるのである。ソイルの表面はシュリンプたちが絶えずかき回しているが、飼育水も適度に流動しなければ効率のよいろ過ができないため、投げ込み式フィルターが有利になるのである。投げ込み式フィルターはその構造上、本体底面付近のスリットから飼育水を吸い込み、上部からエアーと共に排出するため、床部の流動性に欠けるこの飼育スタイルにうってつけになるのだ。ソイルが薄くしかれるだけのこの飼育方法では、与える餌も砕かれたり、溶けたりしてソイルの奥深くに侵入することも避けられて、糞や残餌も効率よくフィルターへと集めることができるのだ。
ただし、飼育の基本を理解していなければ過度の餌や水替えの影響をダイレクトに受けて失敗に直結することも懸念される。レイアウト水槽とは違う、競技的な繁殖水槽と考えてもいいだろう。
ただし、砂利とウールから成り立つフィルター内部の容積はかなり小さいのでこまめなメンテナンスを行うか給餌量の見極めを必要とするだろう。また、ソイルがシュリンプに粉砕されて泥化した粒子も保持されやすいのでスポンジタイプも有力な候補となっている。
別の視点から見れば、投げ込み式フィルターは小型水槽のサブフィルターとしても十分良い効果を発揮することが、このことから理解できるのでうまく取り入れてみるのもいい。




(3)照明目線からのシュリンプ飼育



真っ暗な水槽を眺めても意味がない。照明は観賞面からしても必要である。
水草を育成するにも欠かせないし、特にレッドビーシュリンプは光に対して美しく発色する個体、選別する時にも長い時間がかけられてきた部分があるほどだ。美しいレッドビーシュリンプは照明の質によってもその映り方が一変するほどである。

今回は、いままであまり照明のことが語られることがなかったと思うので、少し踏み込んで考えてみよう。

まずはシュリンプの飼育・繁殖において、水とソイルの関係は最も注目されるファクターであるが、次にろ過=バクテリアの働きに準じて話は移り変わる。さらに水質=物理ろ過と生物ろ過の観点から様々な視点でシュリンプ飼育について考えることができるわけだ。
また、水質に対しては具体的にテスターによって一部が認識できることもあり、シュリンプファンの中には数値マニアになりすぎてしまう傾向も見受けられる。

話を照明に戻した場合、どういった視点でシュリンプ飼育のテクニックに結び付けられるのだろうか。

ずばりポイントは「照明時間と照度が環境に対する影響」である。

水槽の立ち上げ初期と、安定期の差としてコケの色合いを見る。というポイントがある。
ここの良し悪しのケースはもちろん同じ照度と照明時間をもとに変化を確認するということである。
シュリンプ飼育をしているときに、良い環境を願うのは当然で、悪い環境を願う人はもちろん皆無である。どの水槽も調子よくバランスさせたい。
ただし、ろ過方式やソイル選びに比べて、照明システムの違いに注目される方は意外と少ない。メタルハライドライト12時間照射と1灯式蛍光灯12時間照射ではもちろん水槽の変化にも違いがある。しかしそれぞれ6時間の照射であればその差は現れるケースが少なく、むしろあまり変化がなく気づくことができない。また、近年取り換えられることの多いLEDライトも実は波長や光束の違いで人間の見た目以上に水中世界に与える影響が変化してしまうことも同時に触れておきたい。
LEDに変えて水槽が明るくなった後に調子が悪くなったといわれるケースもあり、照明システムの変更が環境悪化の原因と考えていない方も多く存在すると考えられる。
水草を育成することを前提とした水槽環境とそうでない環境ではライトコントロールの意図も変わるわけで、今後飼育スタイルに応じたライトコントロールはもっと注目を浴びることになるだろうと予測する。
日本と海外での飼育スタイルの違いもライティングから読み解くこともできる興味深い一軒と筆者は感じている。



さて、具体的に日々使用している照明で、2倍の時間照射する、もしくはつけっぱなしにするとどうなるだろうか?ご存知の通り、餌の量や水替えのペースは同じでも徐々に茶色のコケやトロロのようなコケに覆われる面積が多くなる。その後シュリンプの活性が落ち、水草もコケに浸食されるようになる。結果的に水槽環境が崩壊に向かうケースが多いのだ。
また、それとは逆に照明を消しっぱなしにすると、徐々に水草は瘦せ細り、レッドビーシュリンプであれば色彩は落ちてしまう。
どちらのケースも途中まで組みたてられていた環境が照明だけで変わってしまうという事実である。
つまり照明は単純に見えて実は水槽環境をコントロールする場合に重要なウエイトをしめているということである。
照明時間と照度が少ない環境では同じ餌やエビの量であっても、それらが多い環境に比べて悪性のコケ、微生物の発生は少ない。その結果ソイルの効果も比較的穏やかに推移し、観賞面でも生体管理面でも極端な悪化につながることが少ない。



上記のことから、水槽立ち上げ初期から変わらない照明環境を基準に、飼育者自身がその状況の中で日々調整を行っていることとなる。
例えば水槽が2台ある場合、どちらも順調に映るケースであっても、照明をつけっぱなしにするとそれぞれ違う反応を起こす。一方はそれでも快適に水草が成長し、シュリンプの活性も落ちないのに対して、もう一方の水槽は茶コケもしくはトロロ状のコケに覆われ、急激に水槽のコンディションが悪くなるケース。パラメータでは測れない環境の違いが照明によって視認できる例として考えたい。
極端な例かもしれないがその場合、当初飼育者にはどちらも順調に映っているとしても、近い将来、先にコンディションを崩すのは後者の水槽であるだろう。
逆のケースでは水槽立ち上げ初期から照明が極端に暗く、短い環境ではエビや水草の代謝は控えられる結果となり、それぞれ生命が生存するうえで順応を余儀なくされるパターンもある。光合成細菌などを含め過剰に反応を起こさないケースのほうがシュリンプが快適に生活できるスタイルもあると判断してしまう。
シュリンプの品種や飼育スタイルによって照明時間と照度の設定は水槽環境を構築してゆく上で水質テスターでの確認とは違いながらも、同じような意義をもっていることに気づく。
品種による進化の過程で照明とろ過の関係を交えながら、この件に関してまた機会があるなら話を進めたい。



(4)ソイル目線からのシュリンプ飼育



シュリンプ飼育・繁殖の要となっているのはやはりソイルバランスのウエイトが大きいだろう。フィルターの種類を選択する際にもソイルの使いこなしが念頭にある。
前述の項目でも要所要所にソイルとの関係が取り上げられているのでシュリンプ飼育・繁殖に密接なかかわりがあるのがご理解いただけるだろう。
特にレッドビーシュリンプの飼育・繁殖は長い年月をかけてソイルと共に歩んできた。理由はやはり、ほかの底床を使用するよりもはるかに飼育・繁殖が容易であった点である。
容易ということはたいへん望ましいことであるが、ソイルを使用すれば誰でもオートマチックにシュリンプを飼育・繁殖ができるのなら今頃シュリンプブームは去っているのだと思う。あきらめずに自分の感性、経験をもとにテクニックを磨きたい。
ちなみにソイルの影響を制御するためにフィルター能力を強化しても根本的な解決にならないのがこれまた不思議なポイントであり、長くシュリンプを楽しむ愛好家やプロブリーダーでもソイルコントロールは気が抜けないのである。



誤解を恐れずに言うならば、アクアリストが考えるろ過とは一般的に清流に近い水質を維持するようなことだろう。ただしシュリンプ飼育の、繁殖に適した環境は澄んだ池、もしくは沼を作るようなイメージだろうか。そう考えるとフィルター能力とソイルの関係はリンクして考えやすくなる。
基本的に飼育が成功すると後に繁殖も成功する・・・と考えてしまいがちであるが、繁殖の成否はいかに長期間に渡り、シュリンプにとって順当な旬を維持できるかということになる。「生きている」と「繁殖する」は当然整うべき内容が違うで難しい。
水質と環境面ではバランスさせることを意識するが、シュリンプの繁殖を望むことは、即ち偏りを生むことである。飼育者にとっての理想はつまり‟偏り”を生み出すことであり、水槽内で矛盾を生じさせることにある。だからこそ肝となるソイルの効果を嚙合わせることで繁殖の手口を掴むのである。よく言われる吸着系・栄養系というソイルの区分けを気にする向きもありながら、ほかの砂利や珪砂にくらべれば吸着系といわれるソイルであってもはるかに栄養素に優れている。たくさんの数量に耐えうる栄養素をもともとソイルが保有している素材で保持するか、飼育していく経過で調整するかによっても、日々の管理スタイルは変わってゆくだろう。
今回は要点程度に留まってしまうが、たとえば極端な話、吸着系と呼ばれるソイルで立ち上げすぐの環境に抱卵個体を入れ、孵化を迎えたときにもある程度稚エビが生存する。しかし、立ち上げ後しばらくたつ環境であっても稚エビが残らない・・・このようなケースはどのように考えるべきだろう。
また、頻繁にソイルを新しいものに交換して繰り返しエビを移しながら繁殖させる方法も存在する。見方によればそれは繁殖ではないと考える方もいるかもしれない。
まずは飼育・繁殖の視点として同じ水槽内でファミリーが増加するパターンの繁殖を目指すのか、シュリンプの絶対数を増加させるのが第一条件であるのか、同じ繁殖という言葉でも違いがあることを認識しておきたい。
結論的にシュリンプの飼育・繁殖の成否は、吸着系・栄養系を問わず、ソイルの養分による環境の偏りをいかに飼育者が調整できるかに尽きるだろう。
ソイルのブランドや餌、添加剤の違いで劇的に成功率が変化するものではないので、参考にするショップやブリーダーに沿ってじっくり取り組んでいただきたい。





(5)水温・水質・からのシュリンプ飼育



水質を維持するために水換えは手軽な調整方法である。しかしシュリンプブリーダーには水替えをよく行う方と、大きな変化をさけるために極力足し水で維持する方の2つに分かれる。初心者の方には水替えをまめに行っていただくほうが成功率が高いと考える。
特に餌を与えたときにシュリンプの食いが活発でない場合、次の機会の前には水替えを行って、餌をあたえてみていただきたい。おそらく前回よりは食いが立っているはずである。ソイルがうまく立ち上がっていないケースであっても餌の量や回数を制限し、定期的な水替えを行っている場合には中毒死の可能性を減らすことができる。
そのままそのペースを維持しているうちに環境がかみ合ってくれば一安心となるが、その途中経過はクリアラインが判断しにくく明確な基準を設けにくい。
水替えなしで環境を嚙合わせるためには餌やシュリンプの量がシビアとなるので成功率を高めるにはある程度のキャリアが必要になるだろう。
先ほどの照明の項目の例を参考に、水質面にも当てはめて考えていただきたい。
とくにいまからシュリンプ飼育を始める方は、すでに自分で繁殖した個体を新しい水槽に移すのに比べて難易度が高い。焦らず時間をかけて水槽を立ち上げることがポイントである。一つの例を上げるなら水草の成長による浄化作用を借りた水槽のほうがうまくいく。立ち上げを判断する材料として導入した水草が新芽を出し、茶コケがほとんど出ない環境ができあがればシュリンプを投入するのである。
また、シュリンプ飼育・繁殖では水温をできるだけ一定に、なるべく高水温は避けて管理すりことが求められる。特に繁殖を目指す場合には26℃を超える水温では成功率が下がる傾向にある。収容数によるシュリンプの活性向上に対して水温上昇による水質悪化はなるべく遠ざけておきたいポイントである。同じ汚れの原因であっても水温が上昇すると、生体が受けるダメージも上がるのである。現在では24℃前後が理想とされているが、シュリンプの生存に関しては20℃前後でも問題はない。ただし水質と繁殖を考えると25℃付近がろ過バクテリアの活性も含めてすべてに合点がいくため、この辺りを基準とした飼育経験を重ねて頂くのが近道と考える。





まとめ:今回はいくつか重要視されているセクションに分けてシュリンプ飼育・繁殖についての考えを述べてきました。それぞれ飼育に関係するアイテムは互いに関わりあっていることがご理解いただければ、シュリンプ飼育・繁殖のステップアップが早いと思います。
とくにソイルに関してはソイル単品で議論されることが多いため、他のファクターとの関連を中心に話を進めました。
最終的にはシュリンプたちを日々観察しながら前後関係を注意深く考えると見えてくるものが多いはずです。難しくとらえずに第一歩を踏み出してください。